ERP の導入が始まった当初の重要なコンセプトの 1 つに、
『 企業内のデータをすべて一元的に管理し、ERP 内の様々な機能モジュール (財務モジュールや生産管理モジュールなど) がこれにアクセスし、処理する』
というものがありました。
これは、同じ情報を複数のアプリケーション システムによって保持および処理していた冗長的な従来の方法を改善し、最適な情報の処理プロセス (業務プロセス) を ERP 内にあらかじめ組み込んでユーザーに提供することを目指したものでした。
しかしながら、ERP 単独で企業内の業務をすべてカバーすることには、さすがに無理があります。
例えば、
- ERP に保持している実績データと外部のデータベースに保持している計画値を比較したレポートを作成したい
- ERP 人事モジュールで社員追加を行った際には、他のシステムの機能 (例えば、給与システムへの登録や CRM への新規アカウント登録など) も自動的に実行したい
- ERP から抽出した顧客にダイレクト メールを送信したい
- ERP で有価証券の再評価を行なう際、株価 Web サービスから最新情報を入手した上で行いたい
など、現行の ERP 機能ではカバーできない要望が出てきます。
これに対処するため、いわゆる "アドオン" によって解決をはかってきましたが、その結果、膨大な数のアドオンを抱え、そのメンテナンス コストの増大を招いています。
また、「ERP は経営層が必要とするビジネス データを生成することには非常に役立つものではあるが、業務の各現場をサポートするシステムではない。」という評価もあります。ERP 以外にも、SCM、CRM、e-コマース システムなどの多種のアプリケーションが企業内で存続し稼働しています。
すべての業務機能を ERP 上で実現するのではなく、アドオンを避け、必要な場合には特定の業務に特化したシステムを導入し、ERP との連携をとりながら企業システム全体を構築していくことが求められます。
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2. SAP NetWeaver PI における問題点 |
SAP 社でも上述の ERP 単独での問題を理解しており、NetWeaver というアプリケーション統合のプラットフォームを提供しています。
SAP NetWeaver には、BI (ビジネス インテリジェンス)、MDM (マスター データ管理)、ポータルなどのコンポーネントと共に PI (Process Integration) と呼ぶ EAI ツールが含まれています。
NetWeaver PI は、SAP システムおよび非 SAP システムとの間の連携をとる統合ツールとなっています。
しかしながら、下記のような問題点も存在します。
- NetWeaver PI を中心 (ハブ) としたハブ&スポークのトポロジーであり、負荷や障害の一極集中を招き易い
ハブ&スポークの問題点については、弊社のブログ記事 『ハブ&スポークの問題点 -バス トポロジーとの対比-』 を参照してください。
- アプリケーション連携には SAP 独自のプロトコル (SAP 標準インタフェース) に準拠する必要がある
SAP のプロトコルに準拠しないアプリケーションには専用のアダプターを用意しなければならない
- NetWeaver PI のメディエーション機能 (データ変換、マッピング、ルーティングなど) では柔軟性に欠ける部分がある
メディエーションの実装・開発期間が長期になりがちで、コストが嵩む
- ビジネス条件の変化や連携アプリケーションの変化に迅速に対応できない
変化に対するアジャイル性が低くなる
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3. Fiorano Platform によるソリューション |
Fiorano Platform は、SOA (サービス指向アーキテクチャ) に基づくビジネス プロセス構築のためのプラットフォームです。
Fiorano Platform には、以下に示す SAP システムと連携 (接続) するためのアダプターが、プリビルトされて組み込まれています。
これらのプリビルト アダプターを用いることで、ノンプログラミングで SAP システムに接続しビジネス データの交換が行えるようになります。
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説明 |
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説明 |
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SAP アダプター BAPI および RFC インタフェースによる SAP システム との連携 |
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SAP モニター SAP システムからの IDOC の受信 (プロセス フローのトリガーとして利用) |
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SAP スタブ Fiorano Platform のビジネス プロセスをあたかも SAP のファンクションとして呼び出せるようにする |
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SAPB1 SAP Business One ERP (バージョン 8.8, 2004, 2005, 2007) とのデータ交換 |
下図は、SAP アダプターの接続の様子を示しています。
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図 1 - Fiorano - SAP アダプター (図をクリックすると拡大図を表示します)
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Fiorano Platform による連携では、下に挙げるような多くのメリットが得られます。
- SAP システムと他の様々な形態のアプリケーションとの間のブリッジ
例: バックエンド システム、クラウド上のアプリ、.Net など非 Java システムなど
- SAP システム内のデータを用いた SAP 標準フォーマットによらない EDI 伝送
SAP における注文処理から取引先への部品発注 EDI、配送センターへの配送指示 EDI の自動化
- ユーザー インタフェースの統合
SAP クライアントの GUI によらないユーザー独自のスクリーン構成
シングル サインオン、ポータル サイトからの SAP アクセス、モバイル アクセス
- エクセル ファイルなどからのバッチ処理によらない SAP への即時データ入力
- 設定/構築が容易で豊富なメディエーション機能
マッピング、データ変換、データ内容によるルーティング、データの分割/集約など
- Web ブラウザ ベースのダッシュボードによるシステム監視および管理
データ トラッキング、ビジネス フローの状態監視、システムの状態監視、エラー通知設定など
- 標準規格に基づくセキュリティ機能
WS-Security (Web サービス セキュリティ)
ユーザー認証 (ベーシック認証、JAAS、Digest 認証)
アクセス制御 (ACL (アクセス コントロール リスト) による権限管理
セキュアなトランスポート (JSSE,SSL,TSL)
公開鍵暗号化 (DES、AES-256、RSA、SHA1、SHA256/384/512など)
ビジネス データが SAP ERP 内で管理、統合される一方で、他のアプリケーション ソフトウェアを利用した柔軟な業務処理プロセスの構築を可能とし、SAP 固有の処理方式に囚われないアジャイル性をもたらします。
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