キーポイント モバイル バンキング     サファリコム (Vodafone) コア バンキング統合フレームワーク     テメノス T24 (Temenos T24) 同期的連携 (Web サービス) と 　　　   非同期的な連携 (イベント メッセージング) の利用 ピア・ツー・ピアによる   分散処理とスケーラビリティ 開発期間とコストの低減

『 革新的な M-Shwari サービスの短期間で効果的な実現に、Fiorano Integration Platform は重要な役割を果たしました。また、予想を上回るトランザクション量を処理するためにも必要不可欠なプラットフォームとなっています。 弊社が設定した KPI のすべてを最初の 90日間で達成いたしました。』 Commercial Bank of Africa テクノロジー部門長 Dennis Volemi

本事例の章

1.  Commercial Bank of Africa の概要
2.  ビジネス上の問題
3.  ソリューション (アーキテクチャ)
4.  ソリューションの利点
5.  効果
6.  参考資料

Commercial Bank of Africa の概要
1962年に設立された アフリカ商業銀行 (Commercial Bank of Africa: CBA) はタンザニアで設立、ほどなくしてケニア (ナイロビ、モンバサ)、ウガンダ (カンパラ) に支店を開設しました。1967年にタンザニアで当行が中央銀行として国有化されたため、ケニアで商業銀行としてあらためて法人化されました。
CBA は現在、東アフリカ最大の商業銀行となり、ケニアとタンザニアで事業を行っています。

CBA はモバイル バンキング サービス“M-Shawari" を、Vodafone グループに属するケニア最大の携帯電話会社であるサファリコム社 (Safaricom) と共同で商品化しました。
M-Shawari サービスは、これまでのサービスを根本的に変えるもので、サファリコム社のモバイル ペイメント システムである “M-PESA” 1700万人のユーザーに普通預金とローン貸付のサービスを提供するものです。
M-PESA ユーザーは銀行の窓口を一度も訪れることなく、口座開設、預貯金、ローンなどすべてのオンライン バンキングのサービスを利用できます。面倒な申込書の記入や書類の提出は不要で、ただサファリコム社の M-PESA に登録すれば M-Shwariサービスを利用できるようになります。
このサービスは、CBA にとって顧客満足度を高める優れた手段となり得るものです。

ビジネス上の問題
CBA のコアバンキング システムのインフラは、モバイル サービスを効果的にサポートする機能を有しておりませんでした。
CBA が最初に必要とした製品は、コアバンキング システムの各アプリケーションを携帯電話サービスなどの外部サービスと連携させるプラットフォームでした。

CBA の IT 部門は、複数のシステムをインテグレーションすることはハードウェア、ソフトウェア、コンサルティングに多大な費用が必要になり、またプロジェクトのスケジュールも大幅に遅れるであろうと予測していました。
異なる複数のアプリケーション間を１対１(ポイント・ツー・ポイント) で接続することは、スケーラビリティにおいてもシステム管理においても非常に難しいものであり、また多岐にわたるセキュリティの脆弱性を招きがちとなります。
このようなシステム統合では、ユーザー数の増加に伴い全体のパフォーマンスが悪化する可能性も高いものです。

ソリューション (アーキテクチャ)
M-Shwari を成功させるには、サファリコム社のモバイル ネットワークとシームレスに連携可能で、さらに膨大な数のユーザーをサポートするスケーラビリティの高いソリューションが必要です。
この目的のために Fiorano Integration Platform が選択されました。

Fiorano Integration Platform は、コア バンキングの各機能を Web サービスとして公開し、サファリコム M-PESA との間のトランザクション メッセージの配信を保障する SOA (サービス指向アーキテクチャ) に基づく連携基盤です。

Fiorano Integration Platform には、アプリケーション連携およびデータフローの基盤として Fiorano ESB (エンタープライズ サービス バス) が内装されています。
Fiorano ESB は、CBA が稼働させているテメノス T24 (Temenos T24) コア バンキング統合フレームワークと密接に連携し、T24 の各アプリケーションを Web サービスとしてサファリコムのモバイル ネットワークに公開します。
Fiorano ESB は、T24 コア バンキングとモバイル ネットワークとを結びつけるハブとして機能します。

Fiorano ESB 上には下記の２タイプの連携インタフェースが構築されました。

• 同期 (Web サービス)
  Web サービスによるサービス インボケーションでは、サービス実行結果がレスポンスとして同期的に (同一インボケーションン セッション内で) 返されます。
  Web サービスによる連携は、
  • サファリコムからのリクエスト受付 (Web サービス スタブ)
  • T24 コア バンキング アプリケーションのインボーク
  で使用されます。
  
  
• 非同期 (イベント駆動メッセージング)
  非同期なメッセージング スタイルは、ローン審査のような顧客のリクエスト処理に時間がかかるサービスに有用な方法です。
  ローン審査のように長い時間がかかる処理において同期的な連携を行うと、システム リソースの効率的な使用の妨げになります。同期を保つためにインボケーション セッションを維持し続けるためには、リソースを長時間解放しないまま保持してしまうからです。
  そもそも長時間にわたってセッションの状態を維持し続けること自体が技術的な問題を内包しています。ネットワーク障害やハードウェア障害が発生した場合のセッション回復処理が技術的に複雑になり、また高度なシステム運用管理も必要となってきます。
  
  Fiorano ESB は、イベント発生時に非同期に処理を始動できるイベント駆動メカニズムにも優れています。CBA で構築されたソリューションではこのイベント駆動を活用してローン審査などの長時間処理に対処しています。

図をクリックすると拡大図を表示します。

1. 顧客がモバイル端末のアプリからローンの審査を依頼します。
2. モバイル端末からのリクエストは、サファリコムのサーバーを経由して
3. CBA サイトの Web サービスをインボークします。
      この Web サービスのエンドポイントは Fiorano ESB 上に構築されています。
4. Fiorano ESB は、Web サービス (SOAP) リクエストの検証やデータ変換などを実施し、
5. コアバンキング システム内のローン審査アプリケーションのデータ スキーマに適合するよう変換されたメッセージ (データ) は、"TEMENOS OUT" というユーザー独自開発のコンポーネントに渡され、
6. "TEMENOS OUT" が、コアバンキング システム (テメノス T24 インスタンス) のローン審査アプリケーションを Web サービスとしてインボークします。
      この Web サービスは、サファリコムからインボークされたものとは異なるコンテキストで実行されます。
      審査の処理には時間がかかるため、コアバンキング システムから "中断" の Web サービス (SOAP) レスポンスが返ってきます。
7. Fiorano ESB では、レスポンスを受け取った時点で当該 Web サービスが完了したものとします。
      サファリコムからインボークされた Web サービスの同期は保持されたままです。
8. ローン審査が完了するとコアバンキング システムでのステータスが "完了" に変更されます。
9. ステータスの変更は、新たなイベントの発生として "TEMENOS IN" コンポーネントが検知します。
10. "TEMENOS IN" コンポーネントは、サファリコムからの Web サービス (SOAP リクエスト) に対して、審査結果を (SAOP) レスポンスとして返すフローを始動させます。
11. SOAP レスポンスは、"Web サービス スタブ" からサファリコムに返され、最終的に顧客のモバイル端末に表示されます。

図をクリックすると拡大図を表示します。

本ソリューションの利点
Fiorano Integration Platform は、連携フローの自動化を簡素化し、迅速な構築を可能とする数多くの機能を有しています。

• コア バンキング アプリケーションとの連携
  コア バンキングの各アプリケーションを他の複数のシステムと連携させる機能は、Fiorano Integration Platform も最も基本的な機能です。
  Fiorano Integration Platform のアーキテクチャは、段階的な連携を可能とするインクリメンタル構築モデルをベースとしています。
  また、標準仕様に準拠したインタフェースを有するコンポーネントを組み合わせて連携フローを構築するアーキテクチャを採用することで、モジュール化の利点を提供し、開発期間およびコストの削減を実現します。
  
  
• ピア・ツー・ピア アーキテクチャ
  Fiorano Integration Platform が採用するピア・ツー・ピア アーキテクチャは、分散コンピューティングの利点を活かしたものとなっており、リニアなパフォーマンス性能を提供します。
  中央のハブを経由せずにピア間で直接メッセージ (データ) 交換が行え、異なるピア間とのメッセージは並列して実行されます。
  これによって、飛躍的にメッセージ配信性能が向上します。
  
  
• T24 サーバー アダプター
  Fiorano Software 社は、Temenos (テメノス) 社とパートナー提携しており、T24 コア バンキング アプリケーション サーバーへのアダプターを共同で開発しています。
  このアダプターを使用することで、特別なプログラム開発を必要とせずに T24 サーバーにアクセスできるようになります。

効果

商品の迅速な市場投入
M-Shawari サービスは、5週間で構築できました。このような短期間での市場投入は、過去に例をみない早さです。

ゼロ コーディング
Fiorano Integration Platform のコードフリー アプローチは、実装期間を飛躍的に短縮し、CBA が他行に先駆けて商品を市場投入できたことに一役買っています。

ユーザー フレンドリィなインタフェース
Fiorano Integration Platform の連携フロー構築ツール (BPM ツール) は、ドラッグ＆ドロップなどマウス操作によって連携を定義できます。
また、組織全体に分散されているアプリケーションや外部との接続状況をリモート監視できるツールを備えており、システムの運用管理性が向上します。

ビジネス アジリティ
Fiorano Integration Platfrom に構築された連携フローは、そのメインテナンスが容易なものとなっています。連携フロー構築期間の短縮と相まって、既存フローの変更や新規サービスの構築が迅速に行えるようになり、ビジネス アジリティが大きく向上します。

大量メッセージと低レイテンシー
M-Shawari サービスでは、トランザクションの数が予想を大きく上回るものとなりました。Fiorano Integration Platform の処理性能の高さによって。１日あたり 1500万から 2000 万のメッセージ処理を非常に低いレイテンシーで達成しています。

参考資料

製品説明のページ

Fiorano Integration Platform (製品説明)  Fiorano ESB